相続手続きのポイント!配偶者控除の活用方法とは?
2023/08/27
相続手続きは、大切な人を失った場合におこなわれる手続きの一つです。その際、遺産分割や相続税など、様々な問題が発生します。特に、配偶者が相続人の場合、控除の活用方法が大切になります。今回は、配偶者控除のポイントや活用方法についてご紹介します。
目次
相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは?
「相続税における配偶者控除」とは、亡くなられた方(被相続人)の配偶者を対象とした相続税の負担の軽減につながる特例で、正式には「配偶者に対する相続税額の軽減」といいます。
相続税は、受け継いだ財産の評価額から基礎控除額(後述します)を差し引いてプラスになった場合に課税されます。しかし配偶者控除の特例が適用されれば、配偶者が取得した遺産額において以下の金額のどちらか多い金額までは非課税となります。
1)1億6,000万円
2)配偶者の法定相続分相当額
つまり、1)の「1億6,000万円まで」で、もし1億6,000万円を超えたとしても、2)の法定相続分として定められている範囲内が、1億6,000万円を超えていれば、課税されることはないという意味を表しています。極端ではありますが、10億円を超えても相続税がかからない場合もあります。
「配偶者控除(配偶者の税額軽減)」と「基礎控除」の違いについて
相続税は、相続が発生したからといって必ず支払い義務が生じるというものではありません。財産の評価額が基礎控除額を超えた場合に課税されるという仕組みになっています。
この場合の基礎控除額は次の計算式で算出します。
【 3,000万円+600万円×法定相続人の数 】
もし、法定相続人の数が2人であれば【3,000万円+(600万円×2人)】で基礎控除額は【4,200万円】となります。ここで仮に遺された財産の評価額が6,000万円であった場合、基礎控除額を差し引いた【1,800万円】に対して相続税が課税されることになるわけです。
配偶者控除(配偶者の税額軽減)の適用要件
相続税の配偶者控除を使うためには、大きく次の3つの条件を満たす必要があります。
1.法律上の配偶者であること
配偶者は被相続人と「法的な夫婦であること」が必要です。「法的な夫婦」とは婚姻届を出しているということであり、それ以外の事実婚や内縁関係の場合は適用が受けられません。
2.相続税の申告書を提出すること
相続税の申告書は税務署に提出するものです。「相続税がゼロだから申告も不要」と考えている人が多いのですが、配偶者控除の適用を受けるには、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告が不可欠です。
ただし、相続した財産の評価額が基礎控除額を超えていない場合は、そもそも相続税が発生しないため申告は不要ですので、ご安心ください。
3.遺産分割が確定していること
相続人全員で相続する財産の分け方について話し合うことを、「遺産分割協議」といいます。この話し合いによって、相続人全員が合意の下、それぞれ相続する財産が決まれば遺産分割が確定したことになります。配偶者控除の適用はその遺産分割の確定が必要です。
なお、配偶者控除の申告のお手続きをご希望の方は、提携の税理士をご紹介致しますので、弊社までお問い合わせください。
相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)の具体的な計算例について
具体的な金額を使って、相続税の配偶者の税額軽減を計算してみることにしましょう。
被相続人の遺した財産の評価額が2億円、法定相続人は配偶者と子ども2人の計3人と想定します。
まずは、財産の評価額から基礎控除額を差し引きます。
基礎控除額:3,000万円 +(600万円×3人)= 4,800万円
相続税 課税対象額:【財産評価額】2億円-【基礎控除額】4,800万円 = 1億5,200万円
基礎控除額は【3,000万円+600万円×法定相続人の数】ですから、この場合4,800万円になります。これを財産の評価額である2億円から差し引くと、1億5,200万円となります。これが相続税の課税対象額です。
法定相続分の割合により分配した遺産額
配偶者:1億円
子1:5,000万円
子2:5,000万円
相続税 総額:2,700万円
※計算式は省略しております。
配偶者が遺産の法定相続分の1/2(2,700万円)を相続した場合には、配偶者は2,700万円の1/2である1,350万円の相続税が割り振られます。
法定相続分の割合については以下を参考にしてください。
※法定相続分の割合
①配偶者と子どもが相続人である場合
配偶者1/2
子ども1/2(2人以上の時は全員で分割)
②配偶者と親が相続人である場合
配偶者2/3
親1/3(2人以上の時は全員で分割)
③ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者3/4
兄弟姉妹1/4(2人以上の時は全員で分割) となります。
配偶者が取得した1億円の遺産は1億6,000万円を下回っていますので、配偶者に割り振られた1,350万円の相続税は配偶者に対する相続税額の軽減の制度により全額控除され、配偶者の相続税額はゼロ円ということになります。